フェミ布勉強本まとめ2019 1~19冊目

 日本の過去のフェミニストたちについてテキスタイル(布)を作るために勉強で読んだ本のまとめです。twitterでつぶやいた感想を引っ張ってきています。

①女たちの20世紀・100人 姉妹たちよ 

ジョジョ企画 編

https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000030584815&Action_id=121&Sza_id=C0

この本は教科書にしたいくらい大活躍している一冊!誰も歩いたことのなかったいばらの道を突き進んできた先輩の女たちがこんなにたくさんいたなんて、読んでいて泣けてきます。「女(わたし)が女(わたし)であることを高らかに謳いながら、道を拓いてくれた女たちへ、愛と感謝をこめて。女たちが連なって生き、作ってきた歴史のシッポに、わたしたち今生きている女たちがいる。」

同じような本として「先駆者たちの肖像 明日を拓いた女性たち」東京女性財団編著もあり、人選が重なっているものもあるが、併せて読むとおもしろいはず。東京女性財団時代にパネル展示したものをまとめたとのこと。

https://honto.jp/netstore/pd-book_01067877.html

余談ですが、東京女性財団はこの後バックラッシュの波にあって、石原慎太郎につぶされているんだよね…。ウイメンズプラザがその役割を引き継いだわけだけど、今の就職本ばかりが面陳されたあの図書館を見ていると、こういった展示がされた時代とは男女共同参画センターの役割が大きく変えられ、ゆがめられているのを感じます。



②「わたし」を生きる女たちー伝記で読むその生涯

楠瀬佳子・三木草子 編

https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000031423874&Action_id=121&Sza_id=C0

これもおもしろかった。伝記を読むときは自分の理想を重ね合わせがちだけど、伝記の女性は理想を生きているわけではない、認めたくないことも含めて読むのが面白いとあって本当にその通り!

登場する女のひとりである、オノ・ヨーコからの日本の女たちに向けたメッセージが良い。「日本の女も大変だということは身にしみてわかりますけど、貴方が次の機会に鏡を見るときは、(鏡はお化粧をするためにあるのではありません)一、あなたは、男のために生きているのではない。二、あなたが本当にしたいことだったら、必ずできる。三.あなたは一人ではない。苦しみ、自覚しはじめている姉妹が世界中にいる。四、女の武器はセックスではなく、覚醒と団結だ。五、二千年の男性上位社会の公害から、世界を救えるのは女だけだ。 ということを、よく自分に言い聞かせてあげてください。」

草間彌生にしろ、オノ・ヨーコにしろ、日本での評価って低すぎません!?彼女たちが存命で同時代に生きているからこそ、フェミニズム的な批評と展示が今こそ行われるべきなのでは。(ただの展示じゃ満足できないので、フェミニズム的な批評に傍線ひいちゃう)



③女性と闘争 雑誌「女人芸術」と一九三〇年前後の文化生産

飯田祐子・中谷いずみ・笹尾佳代 編著

https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033926136&Action_id=121&Sza_id=C0

アナ派、ボル派などの左翼用語の説明が全くなく知ってる前提なので、ところどころ議論に迷子になったけどおもしろかった。「女人芸術」にがぜん興味が出てきた。各地に読者グループの支部があったりしたなんてわくわくする〜楽しそう〜

そして、その時代に生きていて、戦争に加担せずにいるということがいかに難しいか、と改めて思う。先人のフェミニストたちを考えるとき、やはりその点をどう考えたらいいのかを迷ってしまう。

「彼女たちが、1941年8月に死去した長谷川時雨に促されて、と言い訳をし、その時代をスキップしてしまったとしても、私たちはこだわり続けなくてはならない。『女人芸術』から『輝ク』終刊までの13年間とは何であったのか。なぜあのように変節してしまったのか。その荒れ狂った時代を見つめ続け、検証し続けなくてはならない。」



④日本の天井 時代を変えた「第一号」の女性たち

石田妙子 著

https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033935582&Action_id=121&Sza_id=C0

インタビューを元にしていて今も存命な方も多く、わりと最近のことがわかる本。若い女たちへの激励というよりも、頑張りや我慢が足りないという説教に思える部分が多くて好きになれず。赤松良子の章で、男女雇用機会均等法成立時の共産党の女性議員の質問が赤松良子を「傷つける」ものであったとしてるのに、男の江田五月の質問を妙に持ち上げてるのがいちばん気持ち悪かった。著者による印象操作に感じる。今話題の「女帝 小池百合子」で言われてるのも、そういうとこなのかも。赤松良子がどれだけ奔走して男女雇用機会均等法を作ったのかもわかるけど、女たちの落胆と、この時に合わせて飲んだ毒で、今女の雇用がどうなったのか、そのことへの批判を抜きに語れないと思う。



⑤遊郭のストライキ 女性たちの二十世紀・序説

山家悠平 著

https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033270899&Action_id=121&Sza_id=GG

遊廓で働いていた女たちの労働争議やストライキについてまとめた本。識字率の向上により、新聞や本で他の女たちのストライキや逃亡の情報を知り、全国で呼応しあい、動きが活発になっていったというのが当時の新聞記事などから検証されている。中には逃亡の参考あるいは士気の向上に、そういう記事だけを集めたスクラップを作ってたところも。これまでの研究や検証では、遊郭で働く彼女たち自身が語るライフヒストリーがないゆえに、矯風会など支援者側の語りがこれまでの主であり、偏りがあったのも事実であると…。これは今にも通じることだし、支援者である自分も気をつけねばならないところ。これは序説との記載があるから、今後も何か継続されて発表されるんでしょうか。楽しみです。

わたしが購入したのは初版本らしいんだけど、なんとも凝った装丁で、格子のカバーを外すと、女たちが踊ってるみたいな表紙が現れる。再販である新装版も内容は同じとのこと。



⑥良妻賢母主義から外れた人々 湘煙・らいてう・漱石

関口すみ子 著

https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033114685&Action_id=121&Sza_id=E1

「女の書いたものは…」「らしうせよ(女らしくしろ)」と言われた彼女たちに、とても100年以上経ってるとは思えないほど共感してしまう。女子だけに別のレールの高等教育を用意し、そこに巧妙良妻賢母主義を埋め込む様も、今も残る企業のコース別採用のよう。

1番ショックだったのは岸田俊子のことで、彼女は①で紹介した書籍などにも登場する人物で、「同胞姉妹に告ぐ」という有名な著作があるんだけど、それは彼女の書いたものではないのではないか、とこの著者は本の中で推測しているのです。これまでは岸田俊子は上記に挙げた、「同胞姉妹に告ぐ」のような先進的な女権主義の著作があるにも関わらず、初代衆議院議長になる中島信行と結婚後は、いわゆる「内助の功」を発揮し、表舞台に立つこともなかったので、「転向した」と評価されてきた経緯があるのですが、そもそもそれらは彼女の著作や考えそのものではないので、そこにねじれはないはずだという指摘を著者の関口さんはしています。詳しくはぜひ本を読んでほしいけれど、書いたものすら曖昧になる、当時の女の立場の弱さよ、と思ってしまう。

あと文体問題。こないだ某講演で、「友達に男の書いたものしか読まないけど高村薫さんの書いたやつなら読めるってやつがいて〜」みたいな発言があって、硬い言葉を選ぶのが男の書いた文体だと思ってるわけ…っていうか読んだだけでジェンダーがわかるとかどんな超能力?とびっくりしたけど、明治初期にも漢文・漢詩文は男らしい!和文・和歌が女らしい!という認識があったらしく、今もまだ言ってるじゃん!!!!と震えました…。岸田俊子やらいてうは女だてらに漢文が書けるというのも評価されるポイントであり、男のキレポイントであったようです。

ミステリーに挑むような著者のアプローチがあって、すごくおもしろかったので、おすすめ。



⑦悩める女子の教室で偉人が人生を語りだした

木平木綿 編

悩める女子の教室で偉人が人生を語りだした/木平木綿/編 本・コミック : オンライン書店e-hon (e-hon.ne.jp)

最近学研から出たYA向けの本。女性の「偉人」に着目して本を出すっていうところではいい方向性だと評価したいけど、女子学生がメイクや恋愛に興味ある前提で話が進むのはジェンダーまだまだだな感すごい。教科書は男性偏重なのですっごい良い企画だと思うからこそ、子ども向けだからこそ、ん?あ〜そう書くのかあ…みたいなのが気になって気になって…語尾の女言葉とかね…。でもカラーなのに1100円と安いし、これは別の側面に光を当てていて良い紹介記事だな、みたいなのもあるので、ぜひブラッシュアップしてほしいです…。特にサッチャーのところは気になった。サッチャーをあの字数で書くって難しすぎると思うんだけど。でもそれでも炭鉱労働者が「サボりたい」「働きたくなかった」という既得権益者で、サッチャーは大鉈で改革を行った強い女だという風に描くのはやっぱり違うと思う。ビリーエリオット見てくれ。



⑧女たちの戦後労働運動史

鈴木裕子 著

女たちの戦後労働運動史/鈴木裕子/著 本・コミック : オンライン書店e-hon (e-hon.ne.jp)

1994年に出た、戦後直後からの女の労働運動を振り返る一冊。終戦後、国鉄や日教組の婦人部が立ち上がり、にわかに盛り上がった戦後の労働運動が、赤狩りを進めたアメリカ側の方針により、公務員のストライキ権・団体交渉権剥奪、婦人部の解散と半ば強制的に鎮火させられたのを初めて知る。ただその中でも後半は辛抱強く運動を続け、交渉した数多の先輩たちが出てくる。戦前から続いていた女工たちの劣悪待遇の改善運動、日赤看護師の労働運動、バス車掌たちの「身体検査」廃止運動。たくさんの闘いの軌跡が見える。特にバスの車掌の「身体検査」は衝撃的。バス車内での切符の販売業務の後、お金を隠していないのか不必要な部分まで身体検査されていたらしい。金額が合わないと処分も受け、そのことを苦にした自殺者も出ているというのがわかる。

著者の鈴木裕子さんの最後のまとめ文は本当に、今書いたんですか?っていう鋭さ。1994年時点で的確に確実にこれを指摘しているその先見の明に、脱帽。そして、何も変わっていない死に体のようなこの国に、改めて絶望します。



⑨山川菊枝評論集

鈴木裕子 編

山川菊栄評論集 - 岩波書店 (iwanami.co.jp)

⑩おんな二代の記

山川菊枝 著

おんな二代の記 - 岩波書店 (iwanami.co.jp)

山川菊栄の2冊。フェミ布アンケートで得票数1位の人気ぶりだったのですが、読み終わってわかる…ってなりました。逆になんで今まで読んでなかったのかな!?わかりやすさと、今読んでもまったく強度の衰えないその思想、先を読む慧眼に脱帽しかありません。誰にでも勧めやすい1冊だけど、噂によると重版かかってなくて出版社在庫のみらしいじゃん…!?絶版をまぬがれられるようにみんなぜひ読んでね…

「おんな二代の記」の山川菊枝、あとがきより。「明治はいい時代だった、すばらしかったという人もありますが、この本をごらんくださる方には、人類の黄金時代は、過去にはなく、未来にしかありえないこと、それを現実のものとするための闘いの途上、私たちの同志先輩がどんな犠牲をはらい、どんな過ちをおかしたかをいくぶん知って頂けるでしょう。この本は私たち母子二代の思い出話にすぎないのですが、進んでよりよい世の中を作るために社会運動の正しい歴史を学ぶ機縁にもなればしあわせと存じます。」

「おんな二代の記」に収録の「天災と人災」は関東大震災時の朝鮮人虐殺と、社会主義者への攻撃がわかる、実感のこもった文章で、ほんとうにおそろしい気持ちになった。この恥ずべき過去は香港の今にもつながりうるし、そして私たちの未来にもなりうる。



⑪女 天皇制 戦争

鈴木裕子・近藤和子 編

女・天皇制・戦争/鈴木裕子/編 近藤和子/編 本・コミック : オンライン書店e-hon (e-hon.ne.jp)

30年前、年号が平成に切り替わる直前に出た本なので、戦争後44年しか経っておらず、まだ戦争を直に体験者たちの直接の語りが生きていて、すごく面白かった。御真影や、教育勅語、紀元節のお祝いの話とか。日本そして在日の女性たちの語りも入っている。昨日the hate u giveというアメリカにおける黒人差別について描いたYA小説が原作の映画を観たのだけれど、在日朝鮮人女性がオモニについて語るところにもいわゆる「モデルマイノリティ」の話が出てきていて、この社会にも流れる差別の共通性を感じる。「日本人でも朝鮮人でも、わたしたちは女だからいっしょよね」という言葉にゾッとしたという語りもある。わたしたちは、「連帯」について安易に語りがちだけれども、やっぱり自分の特権性を常に点検した上で、それを試みねばと自戒する…。

伊藤野枝と大杉栄の子どもである伊藤ルイの文章も載ってるのですが、「斎田」という大嘗祭に神様に備える米を作る田んぼについて書いている。選定にあたっては被差別部落が見えない場所を探し、田植えは何歳までの処女と決まっていて、精製された米をピンセットで選り分けるらしい。こわすぎない?

ナチズム下における女性運動の協力も興味深い。日本でも平塚雷鳥や市川房枝はじめ、フェミニストたちが積極的に戦争協力をしたわけですが、ドイツではこのあたり、現在はどのように振り返られているのか知りたくなった。



⑫フェミニズムと戦争 婦人運動家の戦争協力

鈴木裕子 著

フェミニズムと戦争 婦人運動家の戦争協力/鈴木裕子/著 本・コミック : オンライン書店e-hon (e-hon.ne.jp)

婦人活動家たちがなぜ翼賛体制に加担していったかを論考した一冊。戦時体制の中でも家父長制のために女性の動員に消極的だった政府の姿勢を、女性の労働運動に関わってきた女性運動家こそが批判し、駒として組み込むよう要望したというのは、なんとも辛いものがあった。戦後、翼賛体制の一部を担った女たちは自分たちの加害の事実を振り返り、省みることができなかった。あの時代を生きなかったわたしたちが反戦の意思を貫けなかったことを責めることはできないと思いつつ、戦後それを見つめ直して欲しかったと思ってしまう。自分だったら、どうしたんだろう。

「しかし、事実や実態への正確かつ冷静な分析を欠いた『平等』論は、えてして落とし穴にはまりやすいものである。戦前・戦中の女性運動家たちが、権力から投げ与えられた『平等』や『解放』幻想で、戦時協力していったさまは、本書の中でくわしく述べたのでくり返さないが、権力とは奸智にたけたものである。利用できるものなら何でものみこんで我が陣営に引きいれる。 」「ならばこそ、参加のあり方や、参加する主体の自主性がより厳密に問われねばなるまい。自立なき参加こそ、権力がもっとも待ち望んでいるものである。」



⑬「女工哀史」を再考する 失われた女性の声を求めて

サンドラ・シャール 著

『女工哀史』を再考する 失われた女性の声を求めて/サンドラ・シャール/著 本・コミック : オンライン書店e-hon (e-hon.ne.jp)

搾取される哀れみの対象としてではなく、彼女たち自身が語るライフヒストリーから女工としての経験を捉えなおそうとする一冊。とはいえ、個人の人生の幸福よりも国家や家族としての生活が優先されてしまう状況だったわけで、過酷な工場環境の中で働いてきた人たちの語りに圧倒される。製糸産業は外貨獲得・富国強兵の柱だったわけだけど、女工たちの過酷な働きの上に成り立っていたということは忘れてはならない。そのくせ労働運動からは排除され、集会・結社の自由もなく、本当にとことん女を利用し、すりつぶす国…。

お小遣いで写真屋を呼ぶのが好きな方がいたとのことでたくさん当時の写真が残っていて、そういうのを見るのもおもしろい一冊。



⑭明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語

田中ひかる 著

明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語/田中ひかる/著 本・コミック : オンライン書店e-hon (e-hon.ne.jp)

主役は高橋瑞ですが、荻野吟子や吉岡弥生、生沢久野など、硬い硬い石を穿って、意思を目指すという道をこじ開けた女たちが幾人も出てきて胸熱くなる一冊。女医不要論のくだりなど、最近の医大の入試差別の件も意識しているのかなと思われた。長くないし読みやすくてよいが、フィクションみ強めです。どこからどこまでがフィクションで、どこからどこまでが史実なのかが注釈などもないので、この本を一読しただけではわからず、たくさんの原典や資料にあたったのであればその点は記載してほしかった。せっかくおもしろいのにもったいなく感じる。



⑮水平線をめざす女たちー婦人水平運動史

鈴木裕子 著

ドメス出版総合図書目録 (domesu.co.jp)

部落解放運動団体だった水平社の主に地方支部で興っていた、婦人部の動きや中心を担った女性運動家たちの軌跡に光を当てた一冊。部落差別に加え、女性差別があるという複合差別の問題をすでにこの時に提起する新しさがありながら、結婚前の若い女性のみが活躍し、結婚した女たちは性別役割分業に取り込まれて、結局それぞれの活動が短命に終わってしまったのが残念でならない…。結局、この時の部落解放運動の団体でも、「運動の主体は男」だったという。

あとがきが本当にすばらしく、1987年出版ですが、すでにインターセクショナリティの視点が感じられる震える檄文です。



⑯この世界の片隅で

山代巴 著

この世界の片隅で - 岩波書店 (iwanami.co.jp)

被曝という体験が、部落や在日朝鮮人、沖縄というルーツによる立場の弱さで、さらに冷酷に、残酷に作用する様が市井の声から語られる。おそらく今はもう生では聞けない、小さな遠いその声に耳を澄ませるような読書体験だった。

「ま、考えようによっては、原爆で一度、そこらじゅう平等に破壊されたために、かえって差別の現存がまざまざと立証されたと言えます。福島町だけがそのように、はっきりと復興から取り残されていた理由として、古い差別の痛手が残っていたから、というだけでは薄弱すぎます。どうしてもここは、→生きのびた差別がいらいろな点で町民の足をひっぱり、ことさらに立ち直りをおくらせた、としか理由のつけようがないんです。部落を未解放のままにきておこうという意思と力が、この国にあるかぎり、どこまで行っても状況は変らんわけです。じぶんより一段劣った者を設定して置きたいという、人々の意識が改まらんかぎり、部落差別は何度でもよみがえってきます。」p47〜48

なんでこの本は絶版なんだろう、「この世界の片隅に」の方ばかりに焦点が当たるのが謎だなと感じてしまった。

山代巴にはこの書籍とは別に獄中書簡集があるんですけど、なぜ出版できたかと言うと、治安維持法違反で逮捕された彼女が広島県三次の女子刑務所に入れられた際に、そこの2人の女看守が虜囚であるはずの彼女に感化されてしまい、獄中書簡を自宅で密かに書き写してたので、内容が残ってたとのこと。囚われの女たちのシリーズ含め、他の本も読んでみたい。



⑰国立市公民館女性問題講座「歴史」 女性史を拓く① 母と女 平塚らいてう・市川房枝を軸に

鈴木裕子 著

女性史を拓く 国立市公民館女性問題講座「歴史」 1 母と女の通販/鈴木 裕子 - 紙の本:honto本の通販ストア

国立市公民館で1988年に行われた女性史講座を、受講者がまとめた記録。鈴木裕子さんの本で繰り返し問われる、なぜフェミニストたちは翼賛体制に加わってしまったのか、私たち自身が絡みとられないためにどうしたらいいのか、平塚らいてう・市川房枝の両者を軸に検討している。講座の最後、「自立的な人格であるために」と題した章は音読したいくらいの銘文。天皇制という制度に縛られた年月を生きることも、自立の前には非常に窮屈なことのはずなんだよね、ほんとに。そして、号令をかける指導者に自分がならないということ。「自らの自立のために行動する」、それを意識するのを忘れないこと。彼女たちの、今よりもずっと生きづらい世の中で残してきたその功績は認めつつ、戦争協力・体制翼賛に加わってしまったというその大きな流れについて、もっと考えていかねばなと改めて思う。

いやしかし、30年前にはこういう連続講座が公民館で受けられたってすごくない!?うらやましい!!!!こないだウィメンズプラザの図書室行ったら、女性史の本はみーんな奥まったとこに追いやられて、1番目立つ面陳は「女性活躍」でしたよ…本の予算もそっちにだいぶ取られてるんだろう…

そして、1930年代も汚職がすごかったらしく、「市民は選ぶな醜類を!築け男女で大東京を」というスローガンで、醜類議員(疑獄や汚職議員)の落選運動を市川房枝がかなりやっていたらしい。今生きてたらなんて言ったかね、マジで。2020年でしょ、本気?ってなるよね、と思ってしまった。



⑱国立市公民館女性問題講座「歴史」 女性史を拓く② 翼賛と抵抗 今、女の社会参加の方向を問う

鈴木裕子 著

女性史を拓く 国立市公民館女性問題講座「歴史」 2 翼賛と抵抗の通販/鈴木 裕子 - 紙の本:honto本の通販ストア

17冊目と同じシリーズの2巻目で、国立の公民館で行われた連続講座を受講者の手でまとめたもの。婦人運動は「女の参加は解放への道」と翼賛体制に加担し、無産婦人運動は家父長制的な男性組織の中で成長することなく潰され、どちらも抵抗の大きな流れにならなかったことがわかる。過去の女たちが加担してしまった翼賛と、なしえなかった抵抗を、講師である鈴木裕子さんは弾圧があったからしかたなかったでは済まされないはずだと、厳しく問う。それが歴史の検証であり、わたしたちが同じ道を辿らず、自立するための一歩であると。

この本は他にも様々な指摘があって、山代巴のエピソードから引いてきて、国際化を語る前にまず在日朝鮮人との向き合い方を考えるべきだということが書かれている。80年代からの課題がいまだに温存され、より差別の感情は剥き出しになって、むしろ状況は悪くなっていると感じる。そして何より、大本丸の天皇制への対峙の仕方を改めて考えねばと思った。現在にも脈々と続く差別構造そのものであるし、戦争責任をきちんと考え直す上でも避けられないこと。この本が出された時はヒロヒトが亡くなったタイミングで、いみじくも昨年皇室の体制翼賛がすごかった今に通ずるものがある。



⑲国立市公民館女性問題講座「歴史」 女性史を拓く③ 女と〈戦後50年〉

鈴木裕子 著

女性史を拓く 国立市公民館女性問題講座「歴史」 3 女と〈戦後50年〉の通販/鈴木 裕子 - 紙の本:honto本の通販ストア

鈴木裕子さんの国立市女性講座シリーズ3巻目。天皇の戦争責任を追及せず、いかに戦争責任の所在を疎かにして向き合ってこなかったのかがよくわかる。そのせいで戦後何十年も経たないうちに「妄言」が出てくる。「自民族主義」を覆せずにここからさらに35年を経たのが、今。今でもよく聞く「逃げ」の言葉がまあよく出てくる…「未来志向」「記憶にございません」「解決済み」。侵略や加害の歴史からいかに逃げてきたのか、それが公職の立場の側からいかに発言されてきたか、初めて知るものも多かった。人間はどうしても忘れる生き物だから、やっぱり「今」をきちんとどこかに記録しておかねばならないって改めて思った。「公娼制度」が慰安婦につながる流れ、それがいかなる搾取を用いてきたのか、為政者によっていかに正当化され、セックスワーカーの女性たちへの蔑視にすり替えられてきたのか。戦後史について鋭く糾弾しながらも、わかりやすく理解できる1冊なのでおすすめ。


2019年はひとまずここまで!

まとめるとやる気が出るということもわかったので、ツイートで報告しつつ、2020年も勉強を継続していくぞ~~~~~


(かんな)

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